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1996年12月28日(土) 00時00分

(番外編)読者の反響 夫婦の溝、妻の嘆き読売新聞

◆互いの精神の尊敬 再生への第一歩

 今月20日付まで7回連載した「続・性の風景」には、前回のシリーズと同様にたくさんの反響が寄せられた。一般紙が性をテーマとすることに今回も抗議の電話があった。一方で、「自分と同じ思いを味わっている人がいることを知った」という長文の手紙も多く、ごく普通の人たちが性についてひそかに悩み、苦しんでいる現状がうかがえた。

◆共感 「もっと早く読みたかった」

 「性の風景をもっと早く読みたかった」「長い間自分自身に問いかけてきたことに、『それでいいんだよ』と分かってもらえたようなうれしい気持ちです」

 このシリーズが始まるとすぐ、記事の内容を自分の体験や思いに重ね合わせた手紙が次々に届いた。多くの人が身近に相談する人もないまま悩んでいる様子が、文面からひしひしと伝わってくる。

◆もし生まれ変われたら夫とは絶対結婚しません

 首都圏に住む40代の主婦は、20年間のセックスレス夫婦のつらい思いを便せん4枚に書いてきた。恥ずかしさをこらえ、「言葉にしなければ伝わらない」と夫と話し合おうとしたが、何の反応も返ってこなかったという。

 「もし生まれ変われたら夫とは絶対結婚しません」と、この手紙は結ばれている。性だけの問題ではなく、きちんと向き合えなかった夫婦の悲劇といえそうだ。

 届いた手紙の多くが、大きくて深い「夫婦の溝」を嘆く妻たちからだった。夫たちは、性を含めて夫婦のあり方をどう考えているのだろうか。

◆困惑 「娘がいるのでほどほどにしてほしい」

 このシリーズでは、セックスレスや妻の不倫、また女性たちの同性愛など一見しただけでは刺激的に映るテーマも扱った。しかし、よくよく見れば性は夫婦の問題も含めて女性の社会進出や画一的な性情報があふれる情報化社会などの問題の反映にすぎなかった。

 「小学校5年生の息子が性に興味を持ち始めているので困った」とか「娘がいるのでほどほどにしてほしい」という中高年の読者からの抗議もあった。確かに、性についてオープンになったと言われる反面で人前で話すべきでないという考えは根強い。

 一般紙はこれまで性を正面から取り上げることはめったになかった。このため、困惑した読者が少なくなかっただろうと想像できる。

 しかし、東京に住む37歳の主婦からはこんな反響があった。「現代は普通に見えても、だれもが問題を抱えているのかもしれませんね」。「悩みをありのままに話し合えるグループがあったら」と書いてきた48歳の女性もいた。これまで性がまじめに語られなかったために、自分1人で悩み、傷ついている人が少なくないのも事実だろう。夫婦や恋人同士が、性の問題を含めてコミュニケーションを深める必要があることは間違いない。

 「夫と一緒に読んでいる」という女性もいたが、自然に、そして飾らずに性を語り合う文化風土がなければ、カップル同士であっても性を口にすることはそう容易なことではない。社会全体が性から目をそらさずに、真剣に考える時期に来ているのではないだろうか。

http://www.yomiuri.co.jp/feature/sfuukei/fe_sf_19961228_01.htm