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1996年09月27日(金) 00時00分

(番外編)読者の反響 多かった共感の声 一方で拒否反応読売新聞

 3日付から9回連載した「性の風景」に、たくさんの反響が寄せられた。セックス情報があふれる中で悲劇が繰り返される現状の報告に拒否反応を示す人がいる一方、性をもっと大事に考えたいという共感の意見も多かった。性をめぐる社会の意識の変化が、こうした読者の声にも表れているといえそうだ。

◆性嫌悪 「女性として生き方考えた」

 連載の1回目は、アダルトビデオの幻想に悩む若者を取り上げた。「朝から息子がこの記事にくぎづけ。新聞でこんなテーマを取り上げる必要はない」と4、50代と思われる女性からのおしかりを始め苦情の電話が数本あった。

 まだタブーなのかと思わされたが、20代の女性からは「私も記事と同じように、相手からセックスがつまらないと言われて悲しかった。勇気を持って取り上げてくれてうれしい」という声もあった。記事に登場した若い男性からは岩室紳也医師のもとに「妻とのセックスの問題は解消しました。でも、悩んでいる男性は多いはず。頑張って下さい」と連絡が入った。

 回が進むにつれ、苦情の電話はやんだ。女性の性嫌悪を取り上げた時には、50代の女性から「人間として女性としてどう生きていくかを考える機会になった」と共感の声が届いた。

◆中絶 「避妊法きちんと話し合って」

 繰り返される中絶については、産婦人科医から「今の保険制度はカウンセリング料が極端に低い。中絶手術したその日のうちに家に帰っていく彼女たちに、避妊について何のアドバイスもしてあげられない」と社会的制度の不備を訴える声もあった。

 結婚前に2度中絶したという30代の女性は「男性は出来たら産めばいい、と安易に考えがち。夫婦の間でも女性が避妊法をきちんと調べ、パートナーである男性に伝える気構えが必要だ。20代でも40代でもきちんと話し合わない限り、解決できない」と書いてきた。

◆更年期 「夫婦間のすれ違いに悩む」

 更年期の女性からは、「更年期は神様がくれたプレゼント。寝室も別にしたおかげで好きな時に読書もできるし、いびきに悩まされることもない」とサバサバした調子の手紙が目立った。

 反対に男性からは、「妻とはもう6年も交渉がありません。ほかの皆さんがどんな性生活を送り、どう解決されているのかを知りたい」(70代男性)など夫婦のすれ違いに悩む声が多かった。夫との生活が楽しいと言う60代の女性は「女性は年を重ね自分が醜くなっていくのをとても気にしているもの。間違っても妻をけなしたりしないで」と、男性にアドバイスする。

 更年期の性交痛から夫婦生活を持たないまま、夫をがんで亡くした60歳近い女性からは「10年早くこの記事を読んでいたらもっと幸せな夫婦になっていたかもしれない」と悲痛な声も寄せられた。

 スウェーデンなど北欧諸国を視察したことがある東京学芸大教授の深谷和子さんは「日本では性の解放というとポルノのまん延をイメージするが、北欧では決まったパートナー以外との性交渉はほとんどなく、若者の間でも性に対する規範が確立している。愛や性に対してどんな意識を持つか、よく考えなくてはならない」と強調する。

 いまの日本で、性についての規範がどうあるべきか。答えは、みんなで考え、見つけていくしかないのだろう。

http://www.yomiuri.co.jp/feature/sfuukei/fe_sf_19960927_01.htm